もう就職しちゃったけれど、設計事務所で働きたいと思ったらどうするか
事務所へのルートと必要なこと
ふつうじゃないけど実際にあった話なので参考程度に
※ここでいう設計事務所は「個人の意匠設計事務所」です
電話/メール/事務所HPから 働きたいと連絡する
正攻法です。直接聞くのが一番早い。まずは聞いてみる。
事務所によって回答は異なるし、最大のヒントだ。
教えてくれたらその通りにする。
例えばメールで「働きたい」と連絡した場合、運が良ければ返信がある。
人気の設計事務所や巨匠クラスの事務所だと返信ないかも。
(というか それ以外の若手・中堅事務所でも返信ないかも、忙しくて)
そんなもんだと思ってまずは聞いてみる。
突然の電話は事務所側も答えづらいから、まずはメールで用件伝えて、翌日に電話するくらいがいい。
敬意と熱意と真面目を前面に押し出す
例えばメールで「私は建築学科を卒業していませんが、◯◯の建築に感動しぜひ◯◯先生の元で働かせていただきたいと思いました。一度お話をお伺いする事は出来ないでしょうか。また、どうすれば採用を検討していただけるでしょうか。」
みたいな素直な感じで。
返信ないかも知れないけれど、こちらの熱意と事情を伝えることができる。
大事なのは意思表示。
「私がやりたい」を表明する。堂々と。
建築家は「普通の会社員」になることを選ばなかった人たちだから、熱意好きな人は多い。
面白い人、素直な人に会うのが好きな人たちだし、変な人に会うのは慣れている。
例え早々に断られたとしても、長い目で見た時に接点となる可能性がある。
「履歴書と作品集をお送りください」の返信(運が良ければ)
事務所に問い合わせると殆どの場合、履歴書と作品集を要求される。
作品集=ポートフォリオ。自分が設計した実例や課題などをまとめたもの。
美術・デザイン系の場合
ジャンルは違えど自分の作品集がある。
自分を表現するツールとして十分だし、むしろ後々に建築+αでとても強い武器となる。
だけど事務所に入るための最初のツールとしては弱い。建築の基本知識の不足がある。
手書きスケッチを書くことはよくあるから、さっと絵が描けるのはものすごく有利。
絵がうまいとデザイン力も高いんじゃないかと勝手に印象が上がる。
絵が描けることはとても有利だけれど、作品だからとはいえアニメの提示は慎重が吉。
アニメの影響は底知れない。何がどう引っかかるかわからない。
建築界隈、いわゆる大人っぽいもの、洗練されたデザインや文化、芸術が好きな傾向がある。
よほど設定を作り込んでいない限り、彼らの興味の対象にならない。
彼らが打ち込んでいるのは「建築」だから、厚みのないものはその分何かを求められる。
どうしても表明したいのなら事務所に入ってポジションを確立してから「うっかりバレちゃった」くらいにがいい。
文系やそれ以外の場合
どうする?論文?それは作品集か?建築をテーマにしていたら有用かも知れないけれど。
建築における文系の強みは、言語表現に長けていること。情緒のある表現を持っている。
…それは業界問わずそうだけど、で、どうする?
作品/ポートフォリオを作ろう
作品の提出を求められたんだから、その通り作品集を作ろう。どうやって作る?
建築以外の人ならなおさら、どうやって?
聞いちゃえ、行きたい事務所に。どうやって?って。
あなたのところで働きたいけれど、作品はないし作り方がわからない。
どうやって作るのがいいと思いますか?って。
「そんなの自分で考えてよ」なのか「そうだねぇどうしようか」なのか、どんなリアクションがもらえるか。
ワクワクしちゃうね。
この時点で邪険にされても、このエピソードが何らかの形で生きてくるから気にしなくていい。
コンペ応募を利用して作品を作る(多分むずかしい)
↑私が事務所への入り方を知らず、ふつうに就職活動をして、履歴書だけで設計事務所を当たった時に言われた。
面接に作品集の要求はされなかったから、ふつうに履歴書 経歴書だけを持参したら「ポートフォリオないの?」と言われて、そこで初めて知る。知らなかったよそんなの。
こういうサイトから建築系のコンペを探して応募する。
もちろん賞は取らなくていい。応募だけ。目的は作品を作ること。
建築系コンペはよほどじゃない限り素人が賞を取るなんて難しい。
あくまで作品を作るためのきっかけだから時間をかけないこと。
課題に対し、どういう解決策を見つけ、どう形にしたのか。
応募作が素晴らしいと絶賛されることはほぼ無いので時間をかけない。
建築でやりたいことが住宅設計でも、その時にその種のコンペがあるとは限らないので
大規模だろうがランドスケープだろうが都市計画だろうが、一旦見てみる。
もしそれでひと作品作り出せたら、それはとてもすごい。
めちゃくちゃすごい。応募できる形にできる時点ですごい。熱々の熱意だと思う。
応募作品を作るために必要なこと
・課題に対して問題解決する計画をまとめる能力
…コンセプト、採用した建築手法、計画案 等
・プレゼンボードを作成する技術
…図面を書く、説明を書く、CADや画像編集系のソフト:イラストレーター、フォトショップ等
コンペ締め切りは数カ月のゆとりがあるものがほとんどだけれど、おそらく手も足も出ないうちにあっという間に時間は過ぎる。
そもそも応募案をまとめるためには建築知識がある程度必要。
簡単なものでは、照明のコンペだとか、小さなスペースのコンペもある。
建築ではないけれど、取り掛かりやすいのは確か。
無いよりはあったほうがいいけれど、効果的かどうかは別。
間違いなく熱意にはカウントされるけれど。
社会人なら手掛けたプロジェクトをまとめて作品集にする
分野外でも社会人ならその異業種の強みを提示してみる。
文字だけの経歴書ではなく、写真や図解のあるポートフォリオ、作品集。
何がフックになるかわからないから、可能性のあることは全部やる。
手持ちのカードで何ができるか、それをどう表現・提示するか。
事務所が作品集を要求する目的はだいたい2つ。
1 個人の考えや表現を見る
2 プレゼン資料作成ができるかを見る
建築主・施主・クライアントに提示するプレゼン資料を作れるかどうかを見る。
建築業界以外でも、資料作成がままなっていれば話を聞いてもらえる可能性はある。
図、写真、などグラフィックが美しいと好感は高い。
もし建築家に「この人建築出身じゃないけれど、作品集がすごいんだよ」と思われたら
建築の飲み込みも早いだろうと判断されることはは大いにあり得る。
それくらい作品集大事。
ある程度は訓練で身につけられるけど、同じくらいセンスも必要だから。
建築をする人はみんな紙面のレイアウトに異様にこだわる。 そして余白の使い方にとても敏感。とにかく余白余白余白、その使い方と配置。 デザインぶるのは一切やめて、王道にシンプルに端正に律儀に丁寧にビシッと作る。 デザインに自信がないなら余計な事はしない。 相手は建築やデザインやアートが大好きな中年たちだ。かなり手強い。 作品集を作るとレイアウトのセンスが如実に現れる。 配置、大きさ、順番、枚数、文字のフォント、ぱっと見で美しいかどうか。 センスのあるなしはとても大事。自然とそれができるかどうかの感覚の問題。 建築家や設計者を目指すために、まずはスタッフになるという関門突破が目的だから デフォルトのセンスはこんな感じです、の表明は大事。
建築の学校に入る(一番安全で最短かも)
夜間大学や建築の専門学校、私塾のような場所。
そういうところで建築の基礎知識と、それとは別に建築の考え方、空間の考え方が学べる場所を探す。
よほど自分から積極的に動かないと、建築の考え方を学ぶに至らない。
認可の専門学校なら、別途で創作活動を行っているか、サークル的なものがあるか確認する。
それに絶対参加する。そこで建築の考え方、空間の考え方を学ぶこと。
そしてプロジェクトごとに必ずポートフォリオを作る。
卒業する頃には立派な作品集になってる。
認可を受けている建築系の専門学校は、卒業すれば2級建築士の受験資格が得られるけれど、そのほとんどが建築士受験に添った建築知識だけなことに気を付けて。
授業を聞いて試験にパスするだけでは足りない。
基礎知識の習得だけで終わらないように気をつけること。
認可を受けた専門学校の卒業生はどこへ行く? 優秀 設計職なら万々歳:「実務寄り」の設計事務所、建設会社の設計部、リフォーム会社の設計部 普通 建設会社やリフォーム会社の施工管理、積算事務所、設備事務所、各種施工会社 意匠性の高い事務所は、大卒で占められていることが多い。
設計事務所は入所の前提として建築知識があることと、空間構成能力を見る。
事務所に入る時は未熟だとしても、空間を考える素養があるかどうか。
建築の考え方ができるかどうか。その事務所での作風に合うかどうか。
言葉を理解して、空間を想像して、それを自分の図面に落とし込むことができるか。
だから作品集/ポートフォリオを見て、その下地があるかどうかの判断をしようとする。
建築系の会社に転職して実務習得し 設計事務所へ転職する
こういう遠回りだけど現実的かつ安全性の高いルートもある。
全くの業界外だけど、収入確保が必須で、でも設計事務所に行きたいスーパー熱意がある人向け。
設計事務所に転職できるような職業といえば、同じように設計職か、現場監督、施工管理。
あとは施工図の設計アシスタントやCADオペレーターが現実的なライン。
建築・建設系の会社から設計事務所への転職、は不可能ではないけれど
おそらく同じように作品の提示を求められる(求められなくても持参するもの)
とにかく余程じゃない限り、設計事務所には履歴書だけじゃ入れないということ。
意外なのはハウスメーカーの設計職で、設計事務所は彼らをあまり良く見ていないということ。
「ハウスの設計は個性がない、考え方が違う」という理由。
最初に習得した設計手法は簡単には抜けきらない、のは個人事務所も大手も同じみたい。
ハウスの設計は大学建築学科卒の優秀な人たちだから、そこを敬遠するのは意外だった。
この話は個人事務所界隈ではよく聞いた話。
ただ、他社で実務経験積んでから、それでも設計事務所行きたいなんて人がいるのかどうか。
ほとんどの場合、設計事務所のハードワークに慄く。
もちろん事務所へ転職した人も居たけれど、実務の習得をすればするほど頭が硬くなる感はあるから、遠回りする分若さを費やしているのがもったいない感じはある。
個人の優先項目が何かで、ルートは大きく変わる。
個人事務所、異業種転職を面白がる人たちはとても多い。
わたしも面白いと思う。ぜひ話を聞きたい。違う業界の話なんて絶対楽しい。
建築は本当にいろんな分野と接点があるから、前職の知識経験はとても貴重だし、たぶん使う時が来る。
変なエピソードで設計事務所に入った人はいる
何かしらの建築ルート、川の流れに入らないといけないのか。
あらためて書き出すと、それなりにルートが限られているのがわかる。
ただ、設計事務所でたまにいる「全然関係なかったけれどなんか入れた」ってひと。
何度か押しかけて建築家と酒飲んでたら事務所に居ていいって言われた、みたいな変な話。
たまたまイベントで顔合わせて、少し経ってから別の場所で偶然再会して、それから事務所行くことになった、みたいな人。
必ずしも建築のルートに乗らず「とりあえず聞いてみた」が功を奏している人もいる。
意外と、いる。うらやましいと思う。
設計事務所に入るために必要なスキル
建築の基本知識があること
建築の実用書や建築家の書いた本読んでます、写真集見てます、ということではなくて。
具体的に言えば、2級建築士に挑戦できるくらいの知識があるかどうか。合格じゃなくて挑戦。
2級建築士試験に挑戦できるというのは、建築の専門学校卒業レベルの知識。
専門卒だって2級の試験は真面目に勉強しないと受からない。
2級建築士の試験(学科と製図) 学科 建築の基本知識(計画 法規 構造 施工) 製図 建築製図の技術(木造)
図面が読めること
木造住宅の図面が読めること、書けること。建築は全ての言葉が線になる。
図面が読めるようになるには、建築知識が必要→2級建築士試験レベル、ということでグルグル回る。
自分の作品があること
=作品集/ポートフォリオのこと。
とにかく作品があればジャッジしてもらえる。
作品集はすばらしいに越したことはないけれど、それよりもとにかく形になっていること。
どんなにかっこいい作品を作ったって「うちとは毛色が合わない」って断られるし。
作品見せてダメ出しだってされるし(むかつくけどね、いちいち直す必要はない)
とにかくジャッジされる土俵に乗れてればいい。
全くの建築以外が設計事務所に入には工夫が必要
事務所に入るなんて簡単だろーと思っていたけれど、書き出してみるとそれなりに工夫が必要だと分かった。
かつての自分もそのルートに乗るために必死で調べてた。
気になったことは直接問い合わせる、が一番で、それの繰り返しで道が固まっていったという感じ。
これをすれば必ず事務所に入れます、なんてほとんどなくて
とにかく動いて、自分で進んで行った道が正解、になる。その時は不安でも。
一般的な会社のように履歴書と経歴書だけで入れるような設計事務所はないので(事務部門なら別)
入るために必要なものの準備をしなければならない。
そのためにどれくらいのお金が必要で、時間がどれくらいかかるのかは、行きたい事務所によって変わる。
そう思うと大学の建築学科に入るのが本当に簡単なルートなんだけど、じゃあ学校の進路決めの時に建築の面白さに気づく人がどれくらいいるのか。
(気付ける人は本当に建築に向いているよね)
義務教育で建築の授業なんてないし、あっても歴史や美術でチラッと建物の写真があるくらい。
修学旅行で社寺巡りなんてよくあるけど、あくまで社会科の延長、歴史の延長としか捉えていない。
建築としての面白さを解く先生がいたら建築を楽しめる人は増えると思う。
ずっと建築に囲まれて、守られて生活しているのに、建築のことについて考える機会が少なくないか…
それまで過ごした部屋や自宅、お友達のお家、学校、病院、図書館、美術館、ショッピングセンター、訪れた街並みに触れて、少しずつやっと建築に感動できるベースが出来上がるといいうのに。
その頃にはもう進路決めの時期はとっくに過ぎている。
ただ、その一時のタイミングを逃したからと言って門が閉じられたわけじゃないし、王道ルートに乗らないが故に得られる「わたし個人の特徴」がある。
分け入っても分け入っても草草草草草だけど、まったく手がかりなしに進むわけじゃない。
調べている時点でそちら側により始めているんだから大丈夫。
ちなみに大学建築学科でも、建築に興味のない人は多い。びっくりする。
好きだと思って入ったけれど、そんなに好きじゃなかったみたい、な人もいた。
社会人から設計事務所へ行くのに一番ネックは収入面が激下がりすることだけど、事務所にいるのはそれでもやりたいという人しか残らない建築純度の高い人たちばかり。
実際の様子がわからないから動きづらいけど、もし事務所への希望が消えないのなら動いてみるのがいいと思う。
事務所はそうやってひとりで動いた人たちの集まり。そしてみんないい人たち。
わたしは何かと挫折しましたが、そうやってふるいに残る優秀な人たちと仕事ができるのはとても面白い。
ちょっとテキストがまとまっていなくて申し訳ありません。
要するに、めちゃくちゃキツいけど、足を突っ込むのはいい経験。
自分の価値観が変わる世界です。
さんざん悩んで検討してください。