意匠とデザイン、言葉の違い

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建築の言葉:「意匠」と「デザイン」の違い

建築における設計は大きく分けて3つ 意匠設計 設備設計 構造設計

設備 と 構造 は言葉通りなので特に言及しない。単語そのままだから。

意匠、英語ではデザイン というこの二つの言葉を

建築の中でもとりわけ意匠の人たちがこの言葉をどんなニュアンスで使っていたか。

 

三省堂 大辞林 第三版より引用
い しょう 【意匠】
① 工夫をめぐらすこと。趣向。 「 -を凝らす」
② 美術工芸品・工業製品などの形・色・模様などをさまざまに工夫すること。また、その結果できた装飾。デザイン。

建築では 意匠:建築全体 デザイン:表層部分 と使い分けている

日本語:意匠(いしょう)≒ 英語:design(デザイン)

建築設計での「意匠」は、主に建築の空間を設計すること。

英語だと「デザイン」になるけれど、建築意匠の人たちはあまりその言葉を使わない。

日本語:意匠(いしょう)

「意匠」という言葉には、建築の範囲を示すニュアンス、および

建築自体と、建築という行為や考え に対しての敬意が込められている と思ってる。

※この言葉のニュアンスの解釈は個人の経験に基づく。

 

これまで言葉の定義をしたことはなかったけれど、無意識に意図的に使い分けていた。

建築家も事務所スタッフも出入りする学生も。

ニュアンスの違いについての言語化も、誰かと話し合うこともしなかったけれど。

建築設計における「意匠」という言葉の範囲 = 建築全体

「意匠」の言葉には計画の「全て」が含まれている。

 

全てとは、計画の立案から仕上げまで。

  • 設計者の敷地に対する見立てや分析、考察、コンセプト、建築手法、空間設計など
  • 敷地に対する建物の配置、ボリューム(大きさ)、形状、仕上、素材、動線、空間の配置など
  • 地域・街・環境に与える影響、効果など

 

建築物というハードな物体だけではなく、形のないソフトなもの全てを含む。

  • 土地や歴史に対する眼差しや見解、問題点の解決、未来への考察、環境や人々への配慮
  • その建築の存在意義、形の理由、将来の在り方、主義主張、思想など

ソフト+ハード全体としての建築が「意匠」である

ひとつひとつを積み重ねた結果の集合知・集合体である建築物が完成したらまとめて「意匠」

称号みたいだと思う。だから気高さと賞賛の雰囲気を持っている。

(設計段階でも意匠という言葉を使うことはあるけれど。主にインテリアを検討する時とか)

英語:design(デザイン)

建築意匠における「デザイン」と言う言葉には、形状としてのかたちの良さを示すニュアンスがある。

デザインの言葉が示すのは、いくつにも重なったレイヤの一番の表層、目に見える範囲のもの。

 

いわゆるインテリア。壁紙、色、素材、照明。建築本体に貼り付ける装飾的なもの。

建築本体が出来上がってから化粧するもの。

インテリアの検討でやっとデザインという言葉が馴染むけれど、それはインテリアが表層にあるものだから。

 

メディアではわかりやすく一括して「デザイン」と言うけれど、建築の彼らのプライドの言葉は別にある。

デザインという言葉は間違ってはいない。でも言語、ニュアンス、感覚がある。

 

建築以外の世間の人は建築意匠を「デザイン」と言うけれど、建築やってる側からすると少しザラっとする。

それは意匠がデザインという言葉に置き換わることで、表層以深が削ぎ落とされてしまうからだと思ってる。

建築意匠における「デザイン」という言葉の範囲 = 建築の表層

表層以深を含まない言葉、デザイン。だから軽くて薄い。

一番簡単に手を触れることができるけれど、そこは建築の最後の結果でしかない。

 

建築に大事なのはコンセプト、設計意図、主旨、問題に対する解決策としてどんな手法を用いたかなど、考えたことが重要視される。

だから「デザインがいい」は「表層が優れている」と変換される。

見た目だけで中身が伴っていないというニュアンスを含んでしまう

建築の人たちは言葉の裏を読みたがるし、深読みをするのが性分。

多面的に物事を切り取り、検討し、空間が表すことの意味を慎重に計画するのが彼らだから、デザインという言葉の軽さ薄さの感覚は持っていると思う。

自覚の有無は別として、だけど感じていなければ使い分けはしない。

 

建築の人間に安易にデザインという言葉を投げかけると「デザインてなんだよ、意匠だよ、真面目にやってるんだよ」と彼らの繊細がザワザワする。

彼らが言及してほしいのは表面的なことではない、計画内容であるということ。

計画内容こそが建築の根幹だから。

 

なのにデザインが良いと言われることは、もちろん悪意も裏もないだろうとわかった上で、「あれだけ考えたのに表面的なことしか伝わっていない」という落胆になる。

 

デザインというふわっと軽い言葉は、だからこそ彼らの自信をほんの少しだけ削る。

次第に「デザイン」の言葉に慣れ、一瞬のザラッとした感覚を無視するようになる。

ものすごく透明感のあるすれ違いというか、見えづらいもの。

 

些細なことのようだけど、その言葉のニュアンスの理解がないことで「建築やってない人にはわからないでしょ」という切り捨てのような納め方になってしまう。

とてももったいないし、せつないね。

建築への敬意を込めて「意匠」を用いると◎

「デザイン」という言葉は「表面的にはかっこいいけれど中身はどうなの?」という煽りになりかねない。

仲間内でダメ出しをする時に「デザインはいいよね〜、で計画はどうなの」はよくあるフレーズ。

 

建築における「デザイン」という言葉は、意図せずに範囲を限定する表現する含みがある。

対して「意匠」の言葉には建築に対しての思考や物体の全てを含む。

建築にはこの厚み、含みがすごく大事。

 

建築を真摯に学び、建築を行う人間に対して「意匠」という言葉を用いることは、その人の考えたことから出来上がったもの全てに対し敬意を示す効果がある。

 

細かい使い分けだけど、細かいからこそ面倒で、その面倒を取ってくれるからこそ相手への敬意表明になる。

「あ、この人はわかってる」と目の前がパッと開ける感じ。

言葉を変えるだけで彼らの気持ちを明るくすることができる。

 

もし建築の人の作品などに対してコメントをする機会があるのなら(あるかな?)

「あなたのデザインはかっこいい」を「意匠はかっこいい」に言い換えてみて。

さらさらと金粉を振りまくように相手を勇気づける効果がある。

 

考えを肯定することは、建築の人間に自信と誇りを与える最高の言葉になるので、もし「意匠」という言葉を覚えていたら使ってみてくださいね、という話。

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