ガウディ建築のなかでもひときわ装飾的なカサ・バトリョ
「ドラゴン退治」神話がモチーフのファンタジーな建築は必見です
せっかくのスペイン旅行、現地で見逃さないよう見どころ8カ所をおさえましょう!
Photo By ChristianSchd
カサ・バトリョ Casa Batllo
ファンタジックな空間を、より効果的に表現した動画がこちら↑
カサ・バトリョの改装テーマ:神話のドラゴン退治
カサ・バトリョに関するガウディの言葉や説明はほとんどありません。
専門家が資料や実測を行い、読み解いたものがテーマとして解釈されています。
Photo by Tom Walton | SPANISH IN BARCELONA
もっとも一般的な解釈は<カタルーニャ地方の神話 サン・ジョルディのドラゴン退治>
この解釈は公式にも用いられています。
カサ・バトリョ解説その1 屋根はウロコ タマネギ十字は刺さった剣
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屋根の瓦はドラゴンのウロコに例えられ、上下にうねる背を表現。
タマネギの十字はドラゴンに刺さった剣だそうです。(タマネギ円筒の中は階段)
カサ・バトリョ解説その2 外壁はきらめく水面
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この壁面装飾は建築家ジュゼップ・マリア・ジュジョール。

はなやかな壁面装飾と名前から女性を連想しますが、男性です
波打つ水面を想像させる外壁にはガラス・石・陶磁器が埋め込まれ、貝殻の破片を集めたようにカラフルですね。
太陽の光が当たることでガラスなどに反射してきらきらと光る、外壁をよりあざやかに演出する装置となっています。
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一番上の半円は王女のバルコニーと呼ばれています。
カサ・バトリョ解説その3 柱は犠牲者の骨
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地上1・2階の外観の柱や窓枠はドラゴンの犠牲者の骨を表していると言われています。
ちょっとダークファンタジー。
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花に囲まれているようながい骨のバルコニー、頭蓋骨のような、骨盤のような。
カサ・バトリョ解説その4 体内のような内部空間
たてもの内部には自然に流れるような不思議な空間があります。
上に吸い込まれるように流れていく階段、なめらかに誘導する手すり。
なだらかな壁や柱は生き物の体内のようです。
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内臓の中みたい
壁の素材は漆喰(しっくい)。ペースト状の漆喰をコテで塗り付けていくため、人の手によるなだらかな曲面と味わいのある陰影を作りだします。
漆喰には調湿効果もあるので、機能とデザイン両方を叶えた壁ですね。
カサ・バトリョ解説その5 うず巻きの天井
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内部空間は装飾とは言いがたい、建築と一体となった作り込まれた空間。見とれてしまうほど優美な曲線は、作者のこだわりが凝縮されているがゆえのもの。

わたしはうず巻きを見て感無量、動けませんでした
漆喰で壁と天井が一体となった継ぎ目のない=シームレスな空間と、動きを演出するような曲線が、非日常を演出しています。
本当にファンタジー映画の世界。
この有名なうず巻き天井が2階で登場し、早々に建築クライマックスなのかと思いきや感動はまだまだ続きます。
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廊下の待ち合いスペースはきのこがモチーフ(なぜかな…)
カサ・バトリョ解説その6 海のパティオとエレベーター
引用 『かっぱファミリー』のそこ行って@あれやって@これ食べて
ガウディは建物の奥まで自然光を取り入れるため、建物内にパティオをつくりました。
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2〜7階まで縦につながるパティオの壁を、光沢のある青いタイルを張ることで光が拡散するよう工夫しました。
カサバトリョの断面図。中央の青い部分がパティオです。
引用 公式HP
暗くなりがちな室奥に光を取り込み、パティオに面して窓を設けることで、換気と採光を取り入れられる快適な室内環境を実現しました。
引用: 『かっぱファミリー』のそこ行って@あれやって@これ食べて
またこのパティオにはガラス張りのエレベーターあります。
引用: こじんたび
エレベーターに乗ってガラス越しに見る青いタイルは海の中を移動しているように幻想的です。
ガラス、鉄、木の素材を感じられる機械・エレベーター、観光の際にはぜひ体験してください。
カサ・バトリョ解説その6 あばら骨の屋根裏
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カテナリー曲線のアーチが連なる7階 屋根裏の廊下。
使用人部屋などは質素・簡素な仕上げとされることが多いのですが、床のタイルまできちんとデザインされています。
裏方の場所でもきちんとデザインすることで、人の居場所を作り出します。この場所を使う人、住う人への敬意・誠意を感じるデザインの力です。
引用 エスティーワールド
あばら骨で囲まれたような屋根裏部屋。
裏方とは思えない、白い壁とアーチの重なりがうつくしい空間です。
結婚式場など、イベント会場としてレンタルもしているようですが、納得。教会のようですね。
カサ・バトリョ解説その7 ドラゴンの屋上
引用 日帰り世界遺産ブログ
屋上の煙突に装飾が施された小さな屋上庭園。
ネガティブイメージの強い排気設備に装飾がされていることで、建築との一体感がありますね(=排気設備感がないという印象操作)
煙突の風変わりなかたちは、空気の吹き戻しを防ぐよう工夫されています。
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森をモチーフにした煙突、ドラゴンの背骨、十字の剣とタマネギ。
モチーフだらけのにぎやかな屋上です。
現実にして異世界の建築 カサ・バトリョ
生き物、植物から創作の発想を得ていたガウディをより近くで体験できる空間です。
サグラダ・ファミリアはとても大きい威厳を感じる教会建築ですが、それに比べカサ・バトリョは日常生活で体験する手頃なサイズの集合住宅の建築です。
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住宅の方が身近に感じるはずなのに、不思議なかたちと装飾を持つカサ・バトリョはまるで別世界。
自分が暮らしている住宅とはかけ離れた空間を体験し、そこが住宅であることを忘れます。

ディズニーランドに近い感覚
エンターテイメント
アトラクション
ディズニーランドのようなハリボテではなく、カサ・バトリョは本物であるということが何よりのインパクトです。
実際の生活の場がある、現実にして幻想的な、嘘みたいな住宅。
サグラダ・ファミリアより強烈な印象を残すカサ・バトリョは、ガウディの独創性を凝縮した建築です。
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△写真:2階の屋上裏庭にあるモザイクタイルが見えるように取り付けられた窓の金網。

ちょっと不思議な装飾の配慮…
建築内部にはドアハンドル、扉や照明、フェンスの金網、モザイクタイルなど、見所がたくさんあります(しかも触れる…!)
独特なかたちを写真に納めていたら、撮影枚数がとんでもないことになる建築。
それだけたくさんの見所が至る所にぶちまけられているカサ・バトリョ。ガウディ大放出。
バルセロナのガウディ建築は、サグラダ・ファミリアやカサ・ミラのほうが知名度が高いのですが、実際に見て回って一番感動・印象強かったのはぶっちぎりでカサ・バトリョでした。
空間に対しのてデザインのこだわり密度が一番高い気がします。
まだの方はぜひ、体験してこそおもしろい建築です。
スペインの建築はこちらで解説しています。


