感想|絵本「猫の建築家」なぜ建築家なのか

 

実家のわたしの本棚で、絵本を見つけました。

背表紙を見て「こんな本もあったな」と思い出したけれど、詳しい内容までは思い出せません。

久しぶりに読み返したら、当時抱いた印象とは別のことを考えました。

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猫の建築家

森博嗣 作|佐久間真人 画|光文社|2002年

 

抽象的な表現だったので内容がつかみづらく、一度目を通してそれっきりだった「猫の建築家」

当時は「考え続ける」ということを表現したのかな?くらいにしか思いませんでした。

 

友人からプレゼントされ、絵がきれいだから手元に残しておいた本。

内容はいつかは理解できる日が来るだろうという期待をこめて本棚にしまったまま十数年。

共に暮らしている猫をなでながら、読み返しました。

絵本の内容

ざっくりの話の流れです。

絵本を開く楽しみを最大限に確保したいのであれば、読まないことをおすすめします。

ただ、わたしの言葉で作者の世界観を表現できるはずがありません。

おとなの絵本

とても哲学的で、静かな時間の流れる本。

秋から冬の雰囲気が、絵の色合いから感じられます。

まず思慮 つぎに観察

建築家である猫が「なぜか」と考えるところから始まります。

それはなぜか、どのようなものなのか。

・絵本の中で「思慮」という言葉・漢字が登場するので、子ども向けではないようです。

猫はつぎに「状態」を観察します。

これはなぜ どうして

観察してまたなぜかと考える。

そしていつも「美」という理由を思い出す。

猫が静かに思索します。

cat

感想

ネタバレなしの感想のつもりです。

絵本を開く楽しみを最大限に確保したいのであれば、読まないことをおすすめします。

着想に想いをはせる

この本を十数年ぶりに読み返した感想の一番の的は、

「きっと作者は、猫の行動観察があってから本を書いたんだろうな」という着想の部分です。

猫を観察し「猫、なに考えてるんだろ」の興味が、この本の出発点になっているのではと思いました。

思慮と観察|猫の行動の特徴

猫の行動の特徴↓が、建築家の考える行動と似ていると作者が気づいたのではないかと思います。

  • じっと見つめる
  • 動かない
  • なにかを探すように動きまわる
  • 猫集会

建築家に置き換える

猫の行動を ⇨ 建築家の行動に置き換えるとしっくりきます。

  • じっと見つめる ⇨ 観察する。
  • 動かない ⇨ 思慮する。造形を考える。
  • なにかを探すように動きまわる ⇨ 行動する。土地を見にいく。
  • 猫の集会 ⇨ 議論する。建築家の学会

猫と建築家、それぞれの習性に共通点を見出して、物語に展開したのではないでしょうか。

何度生まれ変わっても建築家

建築家と同じ行動するのだから、猫はそもそも建築家なんじゃないか。

そこから猫の視線で「建築の要素」を考えるものがたりです。

生まれ変わっても猫、ならば建築家。

猫への敬意

いまどきの猫人気は、とくに愛らしい仕草や行動が大きな理由ですが

この本の猫は思慮深く、思考を重ね、知性あふれる存在として丁重に描かれています。

猫へのリスペクトであふれています。 ※敬意、尊敬、尊重

絵本の世界観

絵本は、ものがたりの入口と出口の大きさが変わらない印象です。

筒の中を歩きはじめ、通り抜けてからその筒が猫形であったというのがわかるような感覚です。

↑わかりづらい変な表現ですね、すみません

 

「猫の建築家」の世界の描写には鉄鋼が多く使われており、産業革命時のイギリスを想像しました。

スチームパンクまで凝ってはいませんが、町工場やレトロな乗物の描写が独特の世界観を表現しています。

落ち着いたトーンの配色も、どことなく異国の雰囲気です。

スチームパンク(Steampunk):SFのジャンルのひとつ。 意味合いとしては「産業革命の原動力となった蒸気機関が、現実の歴史における絶頂期のありようを超越して発展した技術体系や社会を前提としたSF作品」などと形容することができる。

ーピクシブ百科事典より引用

なぜ建築家なのか

十数年ぶりの再読では、なぜ猫が建築家なのかが気になりました。

が 猫飼いとしては想像に難しくありませんね。

猫と建築家の行動が似ているから、はとても納得できます。

 

初めて読んだときはその設定に疑問を持たず、ただ内容に注目しましたが、その内容すらも掴めませんでした。

それは「読んで考える」ということをしなかった(できなかった)にすぎません。

 

今回の再読も、ものがたりの内容はやはり哲学的で少し難しく感じました。

読み手に問いかける効果はふんだんにあります。

なぜ建築家なのか、に思い至っただけでも自分を褒めたい。

 

絵本は絶妙に抽象的です。

つかみづらさは変わりません。

 

また時間を開けて読み返したら違った感想が出てきそうです。

ものがたりとの距離感はずっと縮まらないような気がしますが…。

 

猫の建築家がなにを考えているのか、一度体験してみてほしい一冊です。

続編「失われた猫」

森博嗣 作|佐久間真人 画|光文社|2011年

 

続編があるようです。知りませんでした…

アマゾンレビューでも高評価のようなので、ちょっと読んでみたいな

 

 

▽スペインの現代建築が登場する小説はこちら

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