きっかけはこの名越さんのこのツイート
スリル謎スリル謎スリル!!
もうそれでいいじゃないか、素敵な映画です!
精神科医として敢えて言うなら、これは神を求める者と金を求める者との闘争の神話。
そのどちらもが、欠落を自覚する人間だ。しかしより悲劇的なのはどちらなのか。ずっと余韻が残っている。 pic.twitter.com/kGR9i98uwX— 名越康文 (@nakoshiyasufumi) December 2, 2019
ダ・ヴィンチ・コードって書いてある!
9人の翻訳家 囚われたベストセラー
「ダ・ヴィンチ・コード(Wikipedia)」シリーズの新作出たの?Twitter情報を元に本屋へ。
てっきり新作本が出版されたんだと思ったんだけど、海外文学、小説、新刊のコーナーで見つからない。
スマホで検索。映画=原作本があるんだと勝手に思って、本を探せど出てくるのは映画の話ばかり。
本じゃ無いの?
9人の翻訳家 映画オリジナル脚本
→ 本じゃ無いみたい。
本屋の棚の前で検索し続け、やっと原作なしの映画オリジナルだと知りました(遅い)
しかもダン・ブラウン著書でもなく「ダ・ヴィンチ・コード」シリーズでも無い。
完全オリジナル作品(宣伝キャッチコピーが巨人の肩に乗りすぎ…)
でもミステリ好きなので単純に見たい。インフェルノ面白かったし。
9人の翻訳家 試写会 応募した
そして少し経ってから試写会プレゼントの情報がTLに流れてきた。
ハガキ受付のみで面倒!と思ったものの、だからこそ当たるかな〜と思って派手に書いて応募。
【随時更新】翻訳ミステリー最新インフォメーション>映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』試写会プレゼントのお知らせ #9人の翻訳家 #ダ・ヴィンチ・コード #越前敏弥 #試写会プレゼント https://t.co/OYsRxpWmon
— 翻訳ミステリー大賞シンジケート (@Honyaku_Mystery) December 12, 2019
9人の翻訳家 試写会 当たった
当たった〜@渋谷区円山町ユーロライブ
9人の翻訳家 囚われたベストセラー 公式

予告ムービー、フランス語だわ
9人の翻訳家 2020.1.24.金〜全国順次公開
9人の翻訳家 囚われたベストセラー あらすじ
フランスの豪邸、地下に隠されたシェルターのような密室。
大ベストセラーミステリー三部作の完結編「デダリュス」の翻訳のために選ばれた9人。
外出もSNSも電話も禁止され、地下の密室で翻訳作業に取り掛かる。
ところが
最新のセキュリティを突破して原稿の一部がネットに流出。
「24時間以内に500万ユーロ(≒6億円)を支払わないと、次の100ページも公開する」という脅迫メールが出版社社長に届く。
原稿にアクセスできるのは著者と社長だけ。
翻訳者の犯行だと確信した社長は自ら犯人探しに乗り出すが、厳格な監視体制にも関わらず第2の流出が実行された─。

だって〜ワクワクしちゃう
9人の翻訳家の下敷きとなったエピソード:ダ・ヴィンチ・コードシリーズ 「インフェルノ」
インフェルノはイタリアが舞台、ダンテ「神曲」の地獄篇をテーマにした暗号解読ミステリです。
主人公は大学教授のロバート・ラングドン(トム・ハンクス)

映画も面白いけれど原作はもっっと面白い!
9人の翻訳家 のベースとなったインフェルノのエピソードはこちら。
シリーズ4作目「インフェルノ」の出版は、世界中のファンに同時に届けるため、海賊行為や違法流出を防ぐため、版元が各国の翻訳者たちを秘密の地下室に隔離して翻訳作業を行った。

そんなエピソード知らなかった!
情報流出を脅して金銭の要求はあるらしい(下記リンクはWiki)
- 「ゲーム・オブ・スローンズ」はハッカーによってサイバー攻撃を受け、HBO(放送局)は25万ドル(≒2750万円)を支払った
- 「パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊」はハッカーがオンライン公開するとディズニーを脅迫した
インフェルノも情報流出を防ぐために厳重対策したのね。それほど狙われるものとは知らなかった。
莫大な売上なんだろうな…そりゃ国を超えても楽しいからな…素晴らしいエンターテイメント。
大々的にネタバレなんてたまったもんじゃないな。
9人の翻訳家 登場人物

フランス公式HPのTOP写真
※ 役柄と役名(括弧は俳優の名前)
出版社の社長 アングストローム(ランベール・ウィルソン)
助手 ローズマリー(サラ・ジロドー)
各国の翻訳家
- 英語版 アレックス(アレックス・グッドマン)
- ロシア語版 カテリーナ(オルガ・キュリレンコ)
- ギリシャ語版 コンスタンティノス(マノリス・マヴロマキタス)
- イタリア語版 ダリオ(リッカルド・スカマルチョ)
- ポルトガル語版 テルマ(マリア・レイチ)
- デンマーク語版 エレーヌ(シセ・バベット・クヌッセン)
- スペイン語版 ハビエル(エドゥアルド・ノリエガ)
- ドイツ語版 イングリット(アンナ・マリア・シュトルム)
- 中国語版 チェン(フレデリック・チョー)

日本はいなかった模様 残念
9人の翻訳家 製作陣
監督・脚本 レジス・ロワンサル
脚本 ダニエル・プレスリー
脚本 ロマン・コンパン
撮影 ギヨーム・シフマン
音楽 三宅純 ⇐日本人いたー
プロダクションデザイン シルヴィ・オリヴェ
衣装 エマニュエル・ユークノフスキー
編集 ロイック・ラルマン
赤色の4人は映画「タイピスト!」の製作陣みたい。見たことあるな〜レトロ衣装が印象的だった。
三宅純氏は作曲・編曲・演奏するアーティスト。
リオ五輪 閉会式 椎名林檎が総合演出する「君が代」を編曲した人。
1:38〜君が代。かっこいい(これ調べるまで興味なくて知らなかった…)

ではここまで
試写会で見てきたら感想書こう
9人の翻訳家 試写会行ってきた
ちっちゃいミニシアター145席ほど@渋谷ユーロライブ。
上映15分前に到着したら、場内はほぼ満席。ポツポツ歯抜けに開いた1席がちらほらあるくらい。
前から4列目、中央あたりの1席に着席。周りは50代以上の夫婦らしきがたくさんいた印象。意外。
入り口で入場ハガキを渡して、チラシ?2枚とアンケート用紙を受け取る。
上映後、アンケートの謎解きクイズに答えたら先着でプレゼントあり、らしい。
クイズはあっという間に解けた。隣の夫婦も速攻で解いてた。
上映前に若い男性の声で映画紹介のアナウンス。昔ながらの映画館みたい。
普通の映画みたいに予告ムービーがないのですごくいい。変な余韻を与えられずにそのままスタート。
9人の翻訳家 感想
これ、ただの感想文。しかもダラダラしてるし取り留めがなく、まとめていない。
私自身の備忘録として以下
映画、面白かった。宣伝でも何もなく。当たりだった。
「ダ・ヴィンチ・コード」「インフェルノ」を引用した宣伝が目を引いたけれど、内容はそれにつられたものではなく、単独で面白い。
情報漏洩防止のため翻訳家を地下監禁した というエピソードだけを踏襲して、そこから起こる出来事の予想外の展開。
映画見ているうちはインフェルノ云々は全く気にならなかったけれど、唯一「炎」だけはインフェルノへのオマージュだと感じてしまった。
それほどに炎を使った演出がとても印象的、むしろストーリーとはちょっとミスマッチな感じもしてきた。それくらいに炎。
地下監禁、の地下はヨーロッパの石積みではなくコンクリートの無機質で現代的な感じだし、インテリアも室内装飾も極めてモダンでおしゃれ。
そこに原始的な炎が美しく登場するので現代建物のギャップを感じた。今そう思う。見ているときはそうは思わなかった。
炎が炎だった。際立ってうつくしかった印象。
登場人物はキャラクターがそれぞれ際立っていたけれど、やっぱり最初はごちゃごちゃする。
同じアジア人として中国版翻訳家のチェンに親近感。
映画で必ず存在する美人枠は黒髪のオリエンタル美女。美女は大抵企みを持っているし、ミステリアス担当。
対照的に坊主でハードロックな女性翻訳家、家庭的な主婦兼翻訳家や独身翻訳家、バラエティに富んでいる。
特に印象的だった主婦兼翻訳家のセリフは結構心をえぐられた。びっくりした。めちゃくちゃ時代に乗ってる。
突発的だったけど泣きそうになる程だった。
ストーリーは、いろんな新事実がテンポよく畳み掛けてくるので楽しい。
スピード感がより現代的に思える。昔のミステリのじっくりずっしりした展開ではない。
何転もするので面白い。
作家 翻訳家 出版社 この3者の立場が描かれていて面白かった。
これが明らかになってくるのは後半で、面白さが格段に増す。
また新たなどんでん返しがくるのかと思ってしまって疑心暗鬼のまま進むハラハラ感。
物語の結末は想定外のところに着地した(推測が当たるほどミステリ解決脳ではない)
めちゃくちゃ面白かった本当に。ええー!ええー!の連続。
事情がわかると少し前の表情とか発言の意味がわかってくる楽しさ。ハラハラより面白くてニヤニヤしてしまった。
圧巻だったのは、翻訳家のバトルスタイル。かっこいい。
新しい戦い方だった。斬新!さすが!見ればこれだってわかる。
物語中盤でも最後の展開は読めない。それくらい思わぬ方向に進む。
エンドロールが流れるまで、誰が、どれが、何が、がわからない。
※エンドロール最後まで確認したから、アンケートの先着プレゼントは逃した。
テーマは創作者と敬意。
結局は創作者が一番なんだよなぁって改めて思い知らされた。
ネットが普及して、情報を編集したり切り取ったり、変換したりが盛んになっているけれど、全ては創作物があってこそ。
0→1の偉大さ。
作家への敬意と翻訳家という仕事。
◯◯家、となる職業について思い出した。
芸術家、作曲家、作詞家、作家、建築家、漫画家、陶芸家、演出家…いろいろあるけれど、「者」「士」ではなく「家」であることは、その仕事に哲学を持っているかいないか。
例えば、建築士と建築家は違う。
建築士は単なる技術士。
建築家はそこに哲学や主義主張を込める。技術以外のもの、コンセプト、考え、見立て、将来像。
同じように設計者も技術者としての分類でしかない。
◯◯家は技術だけじゃなく、信念や考え、主義主張、哲学があること。
0→1へのリスペクトも同じ。
建築士の受験資格の実務経験は、0→1にする仕事じゃないと受験資格としてみなされない。
リフォーム・リノベーション設計、改修、施工図作成は受験資格として認められていない。
すでにあるものを編集することは実務経験にならない。
新築の設計、0→1にすることが建築士の受験資格として求められる。
何もないところに作り出す力への重要性、まずはそこなんだという考え方は揺るぎない。
作家へのリスペクトも同じ0→1なんだということ。
翻訳家は作家の創作物があってこそ。
だからと言って翻訳が技術的な話に留まらないこと。
訳し方で原典の価値が変わってしまうから、尚更求められる訳者の思想や見識や考え方→翻訳家。
言葉の訳し方で話が変わるのは古典を読むと実感する。
だからこそ原典を当たれ、一次情報を自分で読め、というのはものすごく説得力があるし、そうしたい。
けれど、読み解く力がない。普通の人は。
編集や解釈や書き方で意味自体が変わってしまうことは、新聞やメディアの何かしらに触れていれば実感する。
一次情報がどう切り取られるか、どう伝えられるかが重要だと少しでもわかれば、翻訳者となる人のプレッシャーを勝手に想像して、その仕事の重要さに慄く。
知識や見識の深さが物を言う仕事だなと思っていたけれど、翻訳家が自身の仕事をどう思っていたかまでは知らなかった。映画を見て意外だと初めて知ったこと。翻訳家あるあるなのかもしれない。
創作者へのリスペクトは業界関係ないんだなーと思いながら映画を見ていた。

-ある言語から別の言語への翻訳ー
所詮 創作者の取り巻きでしかない、と言う自己認識。
私も立派な取り巻き、取り巻きにすらなれていないことを振り返りながら見る。
同じように「取り巻きでしかない人たち」の思いが痛いほどわかったし共感した。
創作者は強くてうつくしい。
それを身を持って知っているからこそ、自らを「取り巻き」と認識してしまう悲哀。
終盤のそれぞれの思いがガンガン交錯するところがすごくよかった。もう一度見たい。
そしてそれがきちんと拾われていく。
それぞれの思いを踏みつけたままにしないストーリーの回収に、見終わって安心した。救われた。
ジャンルを問わず創作物を愛する人なら共感できるし、登場人物に重ね合わせられる。
かつて持っていた思いを忘れた人、捨てざるを得なかった人、本当はまだまだ愛している人。
望みとは違う形で大人になってしまった人たちの思いに応える映画だったと思う。
すごくよかった。
愛のある手でひとつひとつ拾われていく感じ。

感想おわり
「ダ・ヴィンチ・コード」シリーズ最新作「オリジン」の建築について書いたよ
